
兵庫県神戸市の閑静な住宅街に開業から40年以上経つ木村内科医院がある。現院長の木村明裕先生は、御尊父から診療所を引き継ぎ、地域住民や患者様のために診療を行っている。
先代から事業継承をされたのは、平成22年4月。地域には高齢の方も多いため、患者様に配慮して入り口にスロープを設置したり、院内はスライド式ドアで全面バリアフリーの内装へリフォームしたりした。また、「医学的根拠に基づく最新医療の提供を行いたい」との思いから、最新の検査機器なども導入している。
同院は、受付で問診などは行っていない。木村院長の診察は、患者様一人一人としっかり向き合い、問診から検査、治療や処方の説明まですべて一人で行うというスタイルだ。「(患者様が)飲んでいる薬などに興味を持ってもらえるように努めています。処方量をなるべく少なくできるように、他院で処方されている薬を聞いたり、説明する際にはイメージが湧くように実際の薬を見てもらったりしています」と、丁寧な診察の様子が伺える。検温も、木村院長自らが赤外線の体温計で素早く行う。
また、地域に多い高齢者のQOLを高めることも大切にしている木村院長は、「(とくに高齢者は)我慢する人が多いので、早めに受診してもらいたいですね。症状が出てからでは遅い場合もあります」と話される。
木村院長は、医院を引き継ぐ際、紙カルテをこれ以上増やさないために電子カルテの導入を実施した。電子請求の原則義務化やオンライン請求が開始された行政施策をにらみ、診療所のIT化の将来的な動向も見据えてのこと。
もちろん、院内のIT化によって紙カルテの保管スペースが削減した点も大きい。リフォームの際も、最小限のカルテ棚を設置するのみとし、現在は過去カルテの一時保管や、他院からの紹介状やレントゲンのフィルムの管理などで使用するのみである。
メディプラザへ来場される先生の多くは、電子カルテの選定に3ヵ月~半年ほどかかる。しかし、木村院長の場合は、わずか1ヵ月ほどで電子カルテの選定を終えた。それは、木村院長の電子カルテに対するイメージがはっきりしていたからだ。木村院長は、「画面が見やすく、操作しやすいもの」「サポート拠点が神戸にあること」の二つを最大の選定ポイントにした。
上記を踏まえた選定の結果、同院では三洋電機(株)の「Medicom-HR」を導入した。以前は他社のレセコンを利用していたが、今回、一体型の電子カルテを導入した。三洋電機(株)は、全国に約50ヵ所のサポート販売店を持ち、北海道から沖縄まで全国を幅広くサポートしている。これは、故障時や何かあったときを想定すると、電子カルテの選定で重視した「サポート拠点の近さ」という点において魅力的だった。事実、三洋電機は関西に8ヵ所の営業所があり、その中から最も近い営業所がサポートしてくれる。木村院長の場合も、「特に、決め手となったのが代理店の(株)エムシーシステムが神戸の拠点だったことや、新興サービス(株)神戸支店がハード保守を365日24時間体制で行っていること」だという。故障時や何かあったときを想定し、サポート拠点が近いことを重視した。
導入にあたっては、患者様の引継ぎもあったため過去の紙カルテを併用しながらも、なるべく過去カルテの情報を現在の電子カルテに入力した。「事務スタッフのみなさんに手分けをして入力いただき、大変苦労をかけた。おかげで診察がスムーズに行えている」と、スタッフも一丸となった結果、良好に移行が進んでいる。また、検査システムと電子カルテの連携を依頼した際は、代理店担当者が頼りになり、スムーズに連携ができたという。
以前から、紙カルテで診察をしていた診療所の場合、受付と診察室はカルテなどのやりとりのため隣同士に配置をすることが多い。しかし、同院では、患者様の導線を考慮し、リフォームの際に受付を診療所の中心へ、診察室は窓際の明るい場所へ配置。同院の場合、リフォームの際に電子カルテ導入を念頭に置いた設計をしている。このようなレイアウトを可能とするのも電子カルテ導入のメリットだ。

紙カルテから電子カルテへの移行を進めている。現在、最終段階だ。

広くゆったりとした待合室は、清潔で、落ち着いた雰囲気だ。診療所の各所に観葉植物が配置され、安らぎを与えてくれる。

診察室には電子カルテと画像ファイリングシステムを設置。書類などは少なく、すっきりとした印象だ。患者様に、配線が見えないよう配慮し、机下のパネルの中に収納している。
また、感染症等にも配慮し、聴診器を3つ用意し患者様や症状ごとに変えたり、皮膚に触れない(赤外線)体温計を採用している。患者様の院内検査データの入力なども木村院長一人で行っている。
同院にはX線をはじめ、さまざまな医療検査機器があり、それらを全て画像ファイリングシステムで一元管理している。電子カルテでカルテを開くと、画像ファイリングシステムでもその患者様の画像が表示される。検査履歴も一覧できるため、「以前なら、2~3年検査していないことも(一括管理がされていないため)分からなかったが、画像ファイリングシステムの導入後は漏れずに検査を実施している」と医療サービスの向上にも繋がっているようだ。
他院処方スタンプ

紙カルテのように、2号用紙が見開きの状態で表示される。左に配置されている過去カルテは3回分まで表示することができるため、患者様の受診歴もすばやく判断することができると好評である。また、患者情報部分にある「他院薬」には、他院の処方薬やアレルギー等の特記事項がある場合に表示され、クリックすると一覧で見ることができる。他にも、「アレルギー」や「禁忌薬」など患者様個別の特記事項を表示することができる。
他院処方

患者様の特記事項の画面。アレルギーや禁忌薬、他院の処方薬などを書き込むことができる。同院では、高齢の患者様が多く、複数の医療機関を受診しているため他院投薬の記入は必須。木村院長は、他院との重複投与を減らし、少ない処方量で治療することを心がけている。そのほか、タブを切り替えると、患者様の家族歴や簡易サマリーなども記載できる。
投薬オーダーシート

木村院長がよく使用する処方を登録したオーダーシート。下のタブで「短期内服薬」「内服薬」「外用薬」「処方」など、医院ごとに自由に設定した区分で切り替えができるためオーダーしやすい。木村院長は、疾病ごとに並べ、隣に用法を表示することで、素早く簡単に入力できるよう設定している。
検査依頼

外注検査(血液)検査入力シート。外注検査会社のオーダーシートと同じ配置となっていることで、使いやすさが向上している。また、電子カルテで入力した検査は、オーダーシートが自動で出力されるため、検査会社への依頼も簡単にできる。(外注検査オーダーシステム参照)



外注検査のオーダーシステムは、ファルコバイオシステムズ社製を導入している(写真1)。電子カルテから指示された検査オーダーはオーダシステムに取り込まれ検査依頼を行なう(写真2)。オーダー内容がシートで印刷されるため、効率的に運用ができているようだ(写真3)。また、スピッツラベルの印刷もできるため、看護師の手間も省けている。

(左写真)エコー(左:東芝製)と心電計(右:フクダ電子製)。エコーはDICOM出力され、画像ファイリングシステムへ、心電計は電子カルテへそれぞれ検査結果が取り込まれるようになっている。(右写真)肺機能検査機。肺年齢コンセプト搭載のため、結果が「○歳」と出てくる。患者様に「実際の年齢に比べて肺機能が衰えているので、禁煙をがんばりましょう」などと指導できるため、患者様からも理解を得やすいとのこと。

院内迅速検査の機器として、CPRとCBC(どちらも日本光電製)を導入している。感染の原因特定に使用し、検査結果は木村院長自身が入力されている。

検査室には、CTとX線(どちらも東芝製)を導入。出力はDICOMで、全て画像ファイリングシステムで一括管理をしている。また、検査後の診断で手術が必要な患者様は、連携病院へ画像を送ることで、病院での再検査の必要がなくなり、すぐに手術をしてもらえると患者様にも好評だ。整形外科診療所からの検査依頼などもあり、地域連携にも繋がっている。同院では、毎月約20名のCT検査を実施している。

同院では、院内処方を行っている。専従の薬剤師を配置。調剤室と隣接する受付の電子カルテから処方を確認した後、調剤を行なっている。

閑静な住宅街にある同院。高齢者の通院が多い同院の入り口には、スロープが設けられている。院内も、全てバリアフリー仕様で手すりも設置しており、患者様が安心して通える医療機関となるよう配慮してリフォームされたことが伺える。
各部屋における電子カルテと他の機器の連動や使用方法にも見られるように、木村内科医院では、三洋電機(株)の「Medicom-HR」の導入によって、時間の短縮やオーダーミスが減少するなど、当初の導入目的以上の効果があった。そして、電子カルテの機能の活用により、患者様と直に向き合う時間を多くとることができた。
取材を終えた直後、木村院長は休む間もなく在宅で診察を待つ患者様のもとへ出かけた。木村内科医院では、往診を積極的にされており、一日に訪問する患者様の情報はほとんど把握しているという。往診の際は、ポイントとなるカルテを紙に印刷して患家へ出向き、診療所に戻ってからその日の診療内容を電子カルテに入力し運用している。ただし、「Medicom-HR」には、往診に対応できる機能が搭載されているので、今後、往診患者様が増えた場合にも問題なく対応できるだろう。
今回の取材では、電子カルテを初めとしたさまざまな機器の導入と活用についてお聞きし、「地域の患者様が、少しでも自分の身体のことや受けている医療に興味を持っていただけることで、患者様のQOLの向上ひいては、地域医療の質を向上させていきたい」という木村院長の思いを強く感じた。
取材・執筆:メディプラザ 石原正規 柳沢麻衣
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